川の水が海に流れたかったのに、満潮で海の水ものぼってきて
ぶつかって、流れ出た。
実家への電話では、「庭に流れ込むまで、あと・・10センチくらいかな」
「『避難してください』って言ってるけど・・?」
「なるようになる」と落ち着いた声。
「そうやね」と私も納得。
以前、海で溺れかけたことを思い出す。
波に引きずり込まれて、身体が上に向いているのか、下に向いているのかが
わからない。「もう、なるようになれ」と力を抜いた瞬間に、海面が見えた。
自然の力には抗えない。
自分が無力だと感じたときは
あわてず、騒がず、もがかず・・・
身を任せたら、難が遠ざかっていくこともある。
実家はあと数センチのところで、水は引いたけど
水門違いの友だちの家は浸かった。
途切れた道を「どの道なら通れる?」と迂回しながら
みんなたどり着いた。
第一声は「命があっただけでいい」「道が通れただけ、よかったね」
小学校以来の友だちと、「何かないと会わないし、話さないね」
「もっと、違うことで会おうよ~」と倒れた冷蔵庫を一緒に起こしながら、笑う。
遠くは、以前の職場から「お~い、大丈夫?」との電話やメールに
力をもらう。
目の前のがれきを、力を合わせて片づける男の人達。
文句を言う人もなく、ただ黙々と。
誰が見ても本当にひどい状態の家の人が、励まし笑わせている。
起こっている事に意味はなく、災害や事故は、人を謙虚にし
病気や別れは、優しさを取り戻す・・それだけのことかも。
子どもが「お母さん、帰ったら何か楽しい事をしようね」と
言ってくれる。
子どもの方が、純粋で、なんだか神さまに近い・・